(2025.5.5)

ダイビングで避けて通れないスキルのひとつ、それがマスククリア。オープンウォーター講習でも最初に習いますが、実はこのスキル、「できる」と「スマートにできる」では大違い。特にテクニカルな環境――ケーブやレック、リブリーザーでのダイビングでは、“スマートさ”が安全に直結します。
では、あなたのマスククリア、本当に「スマート」ですか?
必要最低限のエアでこそプロフェッショナル
まず前提として、マスククリア=エアを噴射する儀式ではありません。
クリアのたびに「プシューッ!」と泡を撒き散らしていませんか? それ、エアの無駄遣いです。
特にリブリーザーでは、ガス消費だけでなく、ループ内のバランスにも影響するため、“最小限で確実に”が求められます。理想は、泡がマスクから漏れずに、ゆっくりとマスク内の水が下降していくのがわかるくらい。
呼吸の一部を使ってスッと抜けるマスククリア、それが“スマート”です。
マスククリアが中性浮力を崩す!?
次に多くのダイバーが見落としがちなポイント――
「マスククリア=浮力コントロールへの影響」です。
実は、マスククリアの際に息を大きく吐くと、肺の浮力が一時的に下がり、沈みます。その結果、浮力に「波」ができてしまうのです。
特に細かな姿勢コントロールが求められるケーブやレック環境では、これは致命的。スマートなマスククリアでは、浮力を維持したまま、そっと水を排出するテクニックが必要です。
パーコレーションに気を配れ:オーバーヘッド環境の怖さ
ケーブやレックといったオーバーヘッド環境でのマスククリアでは、もうひとつの敵――パーコレーション(泡の巻き上げ)に注意が必要です。
パーコレーションとは、泡が天井や壁を叩き、堆積物を巻き上げて視界ゼロになる現象。これが起きると、方向感覚を失い、一気に事故リスクが高まります。
対策はシンプル。極力少ない気泡でマスククリアをすればパーコレーションはその分少なくなります。泡の処理にも気を配る、それが本物のテクニカルダイバー。
1ダイブ1回以上の使用頻度…もはや“必須スキル”
「マスククリアなんて、講習でしか使わないでしょ?」――そんな声も聞きますが、実際のところ、1回のダイビングで1~2回は確実に使うといっても過言ではありません。
汗、海水、ヘアジェル、冷水ショック、圧力変化……。ちょっとしたことでマスクに水が入り、視界が曇る。
そんなときに素早く、無駄なく、“カッコよく”マスククリアできるダイバーは、バディからも信頼されます。
練習のコツ:マスククリアは「見せ技」として練習せよ!
手順を確認しておきますね。
1. まず、マスクの上からゆっくり水を入れましょう。
2. マスクの両サイドのフレームを抑え、ノーズポケットの下の部分が
ほんのちょっとだけ隙間ができるようにします。それ以外の場所に隙間を
つくらないようにするのがコツです。(片手でできると尚のことスマートです)
3. 正面を見ながら(平衡感覚をなくさない為にも目を開けておくと良いです)、
ゆっくりとハミングするように鼻から息を吐きだします。
マスク内の水がゆっくりと下降していくのがわかるようにしましょう。
4. あらかた排水すると、ノーズポケットにだけ水が残ります。
斜め上を向いて息をすることで全ての水を排水することができます。
最後に、実践的な練習アドバイスをひとつ。
“見せ技”として練習しましょう。
つまり、誰かに見られている意識で、美しく、静かに、無駄なくマスククリアする練習。中性浮力を維持し、泡を抑え、スムーズな手の動きで。
水中での所作が美しいダイバーは、安全性も高い。それは、マスククリアひとつで見抜かれるのです。
まとめ
- マスククリアはエアの節約と浮力コントロールが命。
- ケーブではパーコレーションに注意。
- 毎回使う可能性のある、“必須スキル”。
- スマートさは、練習と意識の積み重ねから。
スマートなマスククリアができるあなたは、すでにワンランク上のダイバーです。
水中での“静かなる所作”を、今日から磨いていきましょう。