ダイブコンピュータの必要性

― 道具としての価値と、それに頼りすぎないための視点 ―

水中の判断を任せていいのは誰か?

「あと何分潜っていて大丈夫?」「どこまで行ける?」「浮上は今していい?」――
こうした問いに水中で即答するには、経験も知識も必要です。
だからこそ登場したのがダイブコンピュータ
リアルタイムで「判断の根拠」を提示してくれる、現代ダイバーの相棒です。

しかしその便利さゆえに、「コンピュータがあるから大丈夫」と過信する人もいます。
今回は、なぜ必要なのか、そして絶対ではない理由を両面から整理します。

なぜダイブコンピュータが必要なのか?

ダイブコンピュータは、以下の情報をリアルタイムで表示してくれます:

  • 現在の水深
  • 潜水時間
  • 無減圧限界(NDL)
  • 上昇速度
  • 水面休息時間
  • 減圧や安全停止のガイダンス(機種による)

これらは、かつては水深計と時計とダイブテーブルで手計算していた内容です。

SDI(Scuba Diving International)では、OW講習の段階からダイブコンピュータを使わせる方針を取っています。
これは「現場で通用するダイバー」を育成する実践的な考えに基づいています。

それでも“絶対”ではない理由

便利なツールである一方、ダイブコンピュータには限界やリスクもあります。

■ コンピュータの限界
  • 理論値ベース:個人の体調や冷え、ストレスは考慮されない
  • 機器トラブル:電池切れ、水没、センサー異常など
  • モデルの違い:NDLや警告の表示が機種で異なる
  • 設定ミス:ナイトロックス未設定、読取ミスなどによる事故例も
■ 過信のリスク
  • コンピュータの表示をうのみにして判断を委ねてしまう
  • バディとの潜水計画が共有できていないとタイミングにズレが生じる
  • 手計算や計画なしで漫然と潜る習慣がつく

道具を「使う」か「使われる」か

ダイブコンピュータを本当に“使いこなす”には、以下の意識が必要です。

  • ダイブプランを毎回確認する → 設定ミスを防ぎます
  • 予備のダイブコンピュータを準備する → 機械は壊れます
  • 限界を責めるのではなく、どれだけ安全性を保てたかを目指す → ダイコンの基準ではなく、より安全なセルフの基準に従って行動すべきです。コンピュータはその範囲を示してくれると考えればより安全に潜れます。

最終的な責任はダイバー自身にあります。

まとめ:便利な道具に「判断力」を加えよう

ダイブコンピュータは、現代ダイビングにおいて欠かせない装備です。
初心者こそその恩恵を受けるべきであり、早い段階から使用することは安全への第一歩です。

ただし、過信は禁物。
道具として正しく理解し、使い、そして必要なときに自分の頭で判断できること。
そのバランスが、これからのダイビングをもっと自由に、もっと安全にしてくれます。