(2025.5.4)

浮上速度は、ダイビングの安全性を守る「命綱」です。たった数分の油断が、減圧症(DCS)や肺の損傷といった大きなリスクに直結します。水深5mでも、急浮上すると体内のガスが膨張・放出されきれず、大きなトラブルにつながります。
「安全なダイバーは、のろのろ上がるダイバーだ!」
この鉄則を胸に刻みましょう。
今回は・・・
- 「9m/分」という推奨浮上速度を理解する
- なぜ従来の18m/minよりも9m/minがより安全なのかを知る
- 実際に安全な浮上を身につけるための意識と方法
をより深く知って頂きたいと思います。
アウトライン
- 浮上速度とは?基本のき
- なぜ18m/minより9m/minが推奨されるのか
- 9m/minで浮上するコツ
- 「のんびり浮上」のメリット
1. 浮上速度とは?基本のき
浮上速度とは、「水中から水面に戻るときのスピード」です。たとえば9m/minなら、1分間に9mだけ上昇する計算になります。でもこれ、ただの「目安」ではありません。
水中では、水圧が急激に変化するので、体の中に溶け込んでいる窒素(またはヘリウム)が一気に膨らんでしまう危険があるんです。この圧力の変化を体に優しく、ゆっくり与えるためのルールが「浮上速度」なのです!
2. なぜ18m/minより9m/minが推奨されるのか
以前の教本では「18m/min」が標準としている教育機関がほとんどでした。ダイブコンピュータも18m基準が多いですよね。これは「事故が起きないギリギリを攻めた速度」だったのですが…
- 研究が進み
- 実際の事故例が分析され
- より保守的な安全マージンを取る動きが広がり
現在では「9m/min」が推奨されています!さらに、9m/minを守ることで、自然に安全停止(3~6mで3分間停止)もスムーズにできるようになります!
(私見ですけど・・・)
9m/minはドライスーツなどの保護具によって規制が変わるという考え方もありますが、私はドライスーツでもウェットスーツでも「浮上速度のコントロールは当たり前に出来るべき」だと思います。ドライスーツは急浮上の恐れがあるから浮上速度を制限しているわけではなく、あくまでも9m/minで浮上することが安全だから、例えウェットスーツでも9m/minを守って浮上するのだと理解しています。
当然ですが、ドライスーツでより遅く浮上する計画をあらかじめ立てておいてそのとおり浮上することを否定しているわけではありません。計画にエアや減圧などの他の問題がない以上、安全面に配慮した良い潜り方だと思います。
ちなみに、TDIはもちろんのこと、SDIもTDIの深い知識を基に基準を作っているので、元々9m/minで浮上するように受講生の皆さんにお伝えしています。テクニカルダイビングの浮上速度はもちろん9m/minです。
3. 9m/minで浮上するコツ

- ダイブコンピュータの浮上速度アラームを必ずオンに!
- BCDの排気は「ちょっとずつ、ちょっとずつ」
- 浮上時もフィンキックは最小限に
- 水中の泡の上昇スピードを目安にする(自分より少し早いくらい)
ここでポイント。
「速くなったら止まる」のではなく、常に一定スピードを意識して動きましょう。特に浅場(0~10m)では浮力が急に強くなるので、油断禁物!さらにゆっくり浮上しましょう。具体的には、深度9mから3mは6m/min、深度3mから水面までは3m/minで浮上することをお勧めします。
4. 「のんびり浮上」のメリット
- 減圧症のリスクが激減
- エア消費も落ち着く(あわてないから)
- 安全停止が楽(ピタっと3mに止まれる)
- 水中景色を最後まで楽しめる!(これ超大事)
のんびり屋のダイバーは、カッコイイのです。
まとめ
浮上速度は、ダイビングの最後にして最大の「試験」みたいなもの。急がば回れ、9m/minでゆっくり、なめらかに浮上することで、安全で楽しいダイビングが完成します。9m/minのマインドセットは、最高のバディへの第一歩。今日から、「急がないダイバー」を目指しましょう!
確認(おまけ)
Q1. 旧来の推奨浮上速度は何m/分?
Q2. なぜ9m/minが推奨されるようになった?
Q3. 浮上時に注意するべき浅場の深度は何m付近?
Q4. 9m/minで浮上するために使う装備は?
→ 答えを思い出せたら、あなたはもう「のんびり屋のプロ」!