浸漬性肺水腫(IPE)とは?

(2025.5.30)

浸漬性肺水腫(しんしせいはいすいしゅ、Immersion Pulmonary Edema:IPE)は、水中に体を浸すことで生じる特殊な肺のトラブルです。一般的な肺水腫は心不全などが原因ですが、IPEは「健康な人」でもダイビングや水泳中に突然発症します。
多くの場合、「冷たい水・強い運動・高血圧・過度なストレス」がリスクを高めるとされ、特に中高年ダイバーやトライアスリートでの報告が増えています。

どうして起こる?〜発症のメカニズム〜

水中では、体が水圧を受けて血液が末梢から中心(心臓・肺)に集まります。
これにより「肺の血管内圧」が一時的に上昇。さらに、冷水や緊張、フィンキックなどの強い運動で血圧がさらに上がると、肺の毛細血管から血液成分(特に血漿)が肺胞内に漏れ出してしまうことがあります。
これが「浸漬性肺水腫」です。

どんな症状?

主な症状は以下の通りです。

  • 突然の息苦しさ(特に浅い深度でも起こる)
  • せき、ピンク色や泡状の痰(血液混じりのことも)
  • 動悸・めまい・チアノーゼ(唇や爪の色が紫に)
  • 呼吸音の異常(喘鳴やブクブク音)

最悪の場合、重篤な呼吸困難や水中意識障害に至ることもあり、非常に危険です。

ダイバーが知っておくべきリスクと対処法

IPEは「誰にでも」起こりうるトラブルです。特に以下の条件が重なるとリスクが高まります。

  • 冷水ダイブ
  • 過度なウエイト・きついウェットスーツ
  • 体調不良・高血圧・心疾患
  • 急な深度変化・激しいフィンキック

発症した場合は:

  • すぐ浮上して水から上がる
  • 横になり安静に(呼吸が楽な体勢で)
  • 救急要請(酸素投与が有効)
  • 無理な再潜水は絶対に避ける

安全ダイビングのために〜予防のポイント〜

  • 寒い日は入水前にしっかりウォームアップ
  • フィンキックや動作は「余裕をもって」
  • ウエイト・スーツは必要最小限でOK
  • 持病(高血圧・心疾患)がある場合は医師と要相談

「体調が少しでもおかしい」と感じたら、無理せずダイビングを中止する勇気も大切です。

まとめ:IPEは“知っていれば防げる”トラブル

浸漬性肺水腫はダイバーにとって「決して他人事ではない」トラブルです。
知識があれば「早期発見・早期対応」で命を守ることができます。
安全第一で、水中をもっと楽しみましょう!