(2025.7.23)
ダイビング:CCR Cave Fun diving
日程: 2025.7.18 – 22(19-21ダイビング)
人数: 2名
Guide: 大濱裕次インストラクター(TOP SECRET Cave Explorers INAZUMI)
宿泊先:AZホテル三重 西鉄リゾートイン別府
Point: Abyss of miracle ~ Silt corner
日本の誇る水中洞窟である稲積水中鍾乳洞でダイビングしてきました!
稲積水中鍾乳洞(以下、稲積)は、3億年ほど昔から洞窟が形成され、8万5千年前の阿蘇山の大噴火によりその洞窟が水没し、今に至ると考えれています。1976年からダイバーによる調査が始まり、1,000mの水中鍾乳洞が確認されました。今も調査やプロジェクトが進行しており、ラズリもプロジェクトメンバーに加えて頂いております。
詳しくは、稲積水中鍾乳洞HPをご覧ください。
https://inazumi.com

施設入り口 最近リニューアルされました

施設の先には白蛇がいたり…


鍾乳洞全景 右の示現の淵がAbyss of miracleのエントリーポイント


ダイビングはこのロマン館を抜けた先の鍾乳洞で
カートに器材を積んで洞窟内を進みます

Abyss of miracle(示現の淵)のエントリー
梯子を下りて水面でセッティングします
洞窟内は湿気がすごく、レンズの曇りが取れませんでした
(1日目)
今回は午前中仕事をして、午後からフライトです。
羽田~大分のANA便を利用しました。
稲積は大分空港からも熊本空港からもアクセスできますが、ダイビングをする場合は、帰りに阿蘇山を越えることを頭に入れておかないといけません。
夜遅く、稲積のふもとにある三重にて宿泊しました。
現地は雨が降っていました。洞窟内の水位と流れが気になるところです。
一応問題なさそうと先に現地入りしているEvisの加藤さんから連絡を受け一安心。
これから3日間3本の本格的なケーブダイビングです。
準備のほとんどを明日に回し、体調面を整えます。

大分は山も海もある、熱海(静岡)のようなところですが、今回は寿司を選択

荷物が多すぎ(重たすぎ)て、なけなしのアップグレードポイントを浪費しました・・
(2日目)
8時半には稲積に到着。
今回ほぼ別行動であるマイバディと現地で合流し、セッティングを始めます。
今回はKISS Sidewinder というリブリーザーを使用します。
やっぱり前日のうちに用意しておけばよかったなぁと思うようなハプニングが1-2点あり、メンテナンスの重要性に改めて気付かされました。
バディの方にもハプニングが発生し、なんだかんだで潜り始めは14時を過ぎていました。
鍾乳洞の中は夏場冬場共に快適です。気温が16度で変動がありません。(ちなみに水温も16度です!)
今回はアビスオブミラクルからエントリー。梯子を下りて入水します。この時点でもう普通ではないダイビング感満載です。

一気に16mまで垂直に下りていきます。
通過するポイントはこんなかんじです。
全て素敵なネーミングです。
(アビスオフミラクル)→(スターゲート)
カバーンエリアとイントロケーブエリアの境で一度ジャンプします。
(ビッグシャンデリア)→ (メインストリート)→(ダークプラネット)
イントロケーブとフルケーブエリアの境でもう一度ジャンプします。
(ディープウェル)→(サインポスト)→(シルトコーナー)→(フェアリーズネスト)
このうち、フルケーブのディープウェルからは深度が40mを越え、アップダウンも20mからあります。まさに山越え谷越えです。
1本目(2日目)はサインポストの手前まで行きました。
mCCRは手動でPO2を管理します。ほんの少しずつ酸素が自動的に補給されるのですが、40m(5気圧:つまりエアの場合のPO2は1.05ata)まで深度を落とす工程でしっかり管理しないと、限界値である1.4ataを越えてしまう可能性があります。せまい&急な下り(というか穴といった方が近いかも)で、なかなか思うようにPO2の管理ができない&PN2も影響(窒素ナルコシス)も感じ、無理をしない範囲でコールを出しました。
また、水温16度(今回は雨の影響もあって15度)の水の中は一度冷えるととことんまで寒くなります。正直、過去一で寒かったです。ホントもうこのまま動けなくなるんじゃないかと思うくらい。。。そんな約2時間のダイビングをし、片付けと明日のセッティングをしたら19時になっていました。くたくたです。

先頭を行く大濱氏


夕食は白頭山で一人焼肉。
(3日目)
今日は日曜日でダイビング以外の観光の方々が多く、迷惑にならないよう早朝5時半から集合です。昨日くたくただったのに、うまく寝付けなかったです。
気合いを入れなおして寒さ対策として買った貼るホッカイロを4枚付けて、昨日の続きを目指します。ディープウェルに差し掛かった深度42m、やはりPO2の管理が甘く1.4ataを越えそうになりました。それと共に、昨日以上にPN2を感じ、メンタル面で続けることが難しいと判断してコールサイン…2日連続でシルトコーナーは断念しました。
稲積の洞窟はライトが無ければ本当に真っ暗です。「深度+暗さ+閉鎖環境=怖い」と思いこむと本当に怖くなります。それも正に今、その環境にいて閉鎖環境故にしばらくその状況が続くのです。この先はダイビングで最も恐ろしいパニックが待ち構えています。なのでもちろん躊躇なく私はコールサインを出し引き返しましたが、やはり先の景色をバディに見せてあげられなかったことは申し訳ないなと思います。今日でバディのダイビングは終わりです。一足先に明日のフライトで地元に帰ります。道中、一言もネガティブなことを言わずにコールサインを責めなかったバディに深く感謝しています。そして次こそは共にあの神秘的な風景を見たいと心から願っています。ありがとう。

バディがとってくれたAbyss of miracleのエキジット風景
(4日目)
昨日ふがいなかった私も今日が最終日です。
昨日、夕食を共にした師匠(加藤大典氏)にこの2日間の出来事を打ち明け、今日やるべきことをはっきりさせて臨みました。ブリーフィングでは大濱さんからも、メンタル面での自信を植え付けて頂きました。あのブリーフィングは本当に心に響きました。深度40mの閉鎖環境で私を支えてくれたのは加藤さんと大濱さんの言葉、そして今日いないバディの残像です。
ディープウェルからサインポストのアローをはっきりみて、山を越え谷を越えて、とうとうシルトコーナーに行きつきました。「いいね!」の看板をみて、まるでここにたどり着けたことにいいね!をしてくれているようで感慨深く感じました。それと共に、ここから先は今の自分ではまだ駄目だとも理解することができました。ガスも安全に帰る量として、もうギリギリです。3回目のコールサイン…今度は達成感と共に出すことができてホッとしました。
ホッとするのもつかの間、まだダイビングは半分しか終わっていません。気を引き締めなおして、40mの深度を何度もクリアし、気づいてしまった「寒さ」に震えてながら帰ってきました。最終6mで減圧クリアし、アビスオブミラクルの先(洞窟的には手前)のデイモンズカバーンからエキジットしました。
約100分のダイビングでした。
帰りに大濱さんに焼肉をごちそうしていただき、ノンアルコールビールで乾杯!…今回も繋ぐことができて本当に良かった。果たして私のダイビングにフェアリーズネストまでの道はつながっているのかわかりませんが、今それをチャレンジするところにたどり着けたことに充実感を覚えています。きっといつか目指すのでしょう。それまで、自分のトレーニングでイメージしていきます。

シルトコーナーの「いいね!」 そしてコールサインを出す私


せまいパッセージ…これをこえると「いいね!」がある

サブダイコンの深度は44mを越えている。(減圧は21%ベースなので参考数値)
T4(O2)は酸素シリンダーを閉めないとPO2管理に影響があったため一時的な数値
この日は夕方には別府まで戻り、ゆっくり温泉に入りました。
はじめての別府だったので少し夜の街も散策。テキトーに調べた「峰」というバーがよさげだったので道に迷いながら行ってみました。バーテンダーさんはおじいちゃん。かなりお年を召しているなーとは思いましたが、聞いてみると戦前生まれでGHQ内のバーで見習いをしていたらしいです。2025年現在で89歳、バーテンダー暦73年、海外のバーテンダーさんも挨拶に来られるような重鎮にお酒を造って頂きました。


お昼は三重(大分)の人気のイタリアン

御年89歳の峰氏

別府タワー 町全体がレトロな感じでロマンを感じる
(まとめ)
稲積は今回で5回目になるかと思います。
今から考えると、最初はドライケーブ内の器材の移動、アビスのエントリー等にも苦労していました。今はとうとう日本で20人も到達していないというシルトコーナーまで行くことができる程になりました。繋げていくことの大切さをひしひしと感じることが出来ました。
自分の限界を越えない(無理をしない)事と未知なる世界へ一歩踏み込むことは相反することに見えるかもしれません。しかし、事前の準備や心構えでその限界というのは変動します。決して馬鹿になれということではなく、冷静に分析し、不安要素を一つ一つ潰し、己に打ち勝ち、その結果未知なる世界へ踏み出せます。今回のダイビングではそのせめぎあいを制することができたということです。しかしながら反省も多々ありました。そもそもトラブルが多かったこと。対策を講じたものもあれば、直前まで対策できていなかったものもありました。経験不足ということです。今回のようなセメント(真剣)でダイビングする場合、どのようなトラブルも起きる前に対策していなければ事故に直結します。また、安全に対しても教わることが多かったです。コストを重視してソフノライムの効果(二酸化炭素吸収材のこと)を軽視していることに恥じました。より安心なダイビングが選択できるのであれば迷わず選択すべきです。いざとなったときに天秤にかけているものが命だと気付く…それでは遅すぎるということを学びました。決して忘れないようにしたいです。正しくないことをするな、常に正しい方を選べという言葉の意味を深く知るいい機会でした。
次はセノーテで潜りますが、今回の学びをしっかりと活かせるようにトレーニングに励みます。