窒素ナルコシスの影響は何mから?

(2025.5.3)

窒素ナルコシス(昔々でいうところの窒素酔い)は、知らず知らずのうちにダイバーの判断力や行動に影響を与えます。
そのため、発生しやすい深度を知っておくことは、安全な潜水計画を立てるうえで非常に重要です。

おさえておきたいこと

・窒素ナルコシスが起こり始める深度を知る。
・自分自身やバディの異変に気づくための目安を持つ。
・適切なダイビングプランとリスク管理をできるようにする。

アウトライン

  1. 窒素ナルコシスとは何か?
  2. 何mから影響が出始めるのか?
  3. どんな症状があるか?
  4. 対策と注意点
  5. ナイトロックスやヘリウムによる対策
  6. 学べる教育機関と講習紹介

1. 窒素ナルコシスとは何か?

窒素ナルコシスは、圧力下での窒素ガスの作用によって神経系がマヒ状態に陥る現象です。
簡単に言うと、深く潜るとお酒に酔ったような状態になります。
もちろん、飲んでいるわけではありません。呼吸している窒素のせいなのです!

2. 何mから影響が出始めるのか?

一般的に、深度20mあたりから窒素の影響は現れ始めるといわれています。
そして、深度30mくらいになると、ほとんどのダイバーが自覚できるレベルに達します。
つまり、20m台でも油断はできないということですね!

3. どんな症状があるか?

窒素ナルコシスの症状はさまざまですが、代表的なものはー

  • 理由もなく楽しくなる(テンションが上がる)
  • 注意力散漫になる
  • 判断力が鈍る
  • 手元の操作が雑になる
  • 恐怖心がなくなる(これが一番危ない)

これらが組み合わさると、ダイビング中に致命的なミスを起こすリスクが高まります。

4. 対策と注意点

  • 自分の深度を常に把握する。
  • 30m付近では、特に冷静に自分を観察する。
  • 違和感を感じたら、すぐに浅場へ移動する。
  • バディ同士で様子を確認し合う。

窒素ナルコシスは、気合ではどうにもなりません!
無理せず、スマートに対応しましょう。

5. ナイトロックスやヘリウムによる対策

では、どうすればこの窒素の影響を軽減できるのでしょうか?
その答えのひとつが、呼吸ガスの変更です。

ナイトロックス(エンリッチド・エア・ナイトロックス)

ナイトロックスとは、通常の空気(酸素21%)よりも酸素濃度を高めたガスのことです。酸素が多い分、窒素の割合が減るため、窒素の影響(つまりナルコシス)も多少軽減されます。ただし、酸素中毒のリスク管理が必要になるので、使用には正しい知識が不可欠です。

ヘリウム(トライミックス)

もっと深く潜る場合には、ヘリウムガスを混ぜたトライミックスを使うこともあります。ヘリウムは、窒素に比べて神経への影響が非常に少ないため、ナルコシスを劇的に減らす効果があります。そのかわり、体温低下(ヒートロス)や、呼吸器の工夫(高圧環境下での呼吸抵抗)が必要になり、さらに高い技術が求められます。

6. 学べる教育機関と講習紹介

このような高度なガス管理やリスク対策は、正式な講習で学ぶ必要があります。
代表的な教育機関と対応コースは以下です。

  • SDI(Scuba Diving International)
    • コンピュータ・ナイトロックス・ダイバー(ナイトロックス使用法)

  • TDI(Technical Diving International)
    • ナイトロックスダイバー(SDIよりもさらに深いナイトロックス使用法)
    • アドバンスド・ナイトロックス(EAN41-100の使用法)
    • デコプレッション・プロシージャーズ(減圧手順の方法)
    • エクステンディッド・レンジ(エアで55m、複雑な減圧手順)
    • トライミックスダイバー(ヘリウムを使用する複雑な減圧手順)
      … SDI・TDIについてちょっと説明が雑ですが、詳しくはお問い合わせください。

  • PADI(Professional Association of Diving Instructors)
    • エンリッチド・エア・ダイバー
    • テック40/テック45/テック50(テクニカル講習)

特にTDIは、トライミックスやヘリウム使用の深い知識と技術をしっかりカバーするので、本格的にテクニカルダイビングを目指す人にはおすすめです。
※ TDIはSDIの姉妹機関です。

まとめ

窒素ナルコシスは、深度20m付近から影響が出始め、30mを超えると多くのダイバーが自覚できるレベルになります。
これに対して、ナイトロックスで窒素割合を減らす、トライミックスでヘリウムを使用するといった対策が有効です。
しかし、これらを安全に使うには、専門講習で正しい知識と技術を習得することが絶対条件です。

深く潜るなら、”知ってる”ではなく”使える”ダイバーになろう!