(2025.5.10)

フィンキックは、水中での移動の基本中の基本です。
しかし「どのキックがいいか?」「なぜバタ足だとダメなの?」といった疑問を持ったまま潜っているダイバーも少なくありません。
やさしく、効率的に、そして環境にも配慮できるフィンキックを身につけることで、ダイビングはもっと楽しく、安全で、美しいものになります。

目的

・基本はフロッグキック!(潜る環境にもよりますが)
・初心者でもわかるフィンキックの種類と選び方
・テクニカル環境でも使える応用力をつける

アウトライン

  1. よくあるキックとその問題点
  2. 基本のフィンキック3選
  3. 実践のコツとトレーニング法(フロッグキック)
  4. モディファイドフロッグキックとは
  5. 環境へ優しさとテックとの相性
  6. まとめ

1. よくあるキックとその問題点

フラッターキック(バタ足)

オープンウォーターで最初に習うキックですが、フォームが崩れやすく以下の問題が生じます:

  • 泥を巻き上げて視界ゼロ
  • スタミナ消費が激しい

ただし、必要がありダッシュする場合や激しい潮流の中で前に進みたいときは有効です。

2. 基本のフィンキック3選

通常は、フラッターキックとフロッグキックが選ばれますが、私は以下の3つを軸にして考えています。

フィンキック名特徴適した環境
フロッグキック水を後ろに押しのけるキック。推進力と安定性に優れる。OW以降の基本、テックにも対応
モディファイドフロッグ小さく省エネで蹴るフロッグキック。狭所や泥地で最適。ケーブ、レック、浮力維持が重要な場面
バックワーズキック後退できる。ホバリング時や狭い場所での位置調整に。回転できない狭所、フォトにも便利

3. 実践のコツとトレーニング法

① 中性浮力とトリム(水平姿勢)を確立 膝を90度ほど曲げる
② つま先を外側に向ける
③ ゆっくり水を後ろに押しのける
④ ゆっくり足を閉じて推進力を得る(親指に力を入れるイメージ)
⑤ 戻すときは抵抗を最小限に、リラックスして戻す

※ ④を意識すると推進力がかなりUPします

 よくあるNG例

・ 足全体を動かしてしまう(⇒泥を巻き上げる)
スピードが速すぎる(⇒効率低下)
・ トリムが崩れている(⇒キックが斜めに入る)

 練習方法

・ プールや透明度の高い海で「泥を巻き上げない」練習
・ 片足ずつのキックを意識してフォームを確認
・ GoProなどで撮影して自分のフォームを確認
・ バディ同士で評価しあう
フィンを脱いで「フィンなし」で足の動きを確認

4. モディファイドフロッグキックとは

通常のフロッグキックの“縮小版”。
ヒザから下だけを使い、小さく、静かに、そして効率的に前進するキック。

特徴
・ 泥を巻き上げにくい(シルトアウト防止)
・ 推進力は控えめだが高精度な位置取りが可能
・ ガス消費が抑えられる
・ 他のダイバーや環境に干渉しにくい

使う場面
・ ケーブやレックの狭い通路
・ サンゴの間を泳ぐとき
・ 生物観察で静かに近づきたいとき
・ 浮力調整しながらピンポイントで前進したいとき

5. 環境へ優しさとテックとの相性

モディファイド・フロッグは、テクニカルダイビングの中核的技術です。

理由
・ 低シルト環境でも視界確保を可能にする
・ 狭い洞窟や沈船でも安全に通行できる
・ シリンダーや装備への負荷を最小限にできる

また、SDIやTDIの講習でも必須スキルとされており、上達することでテックダイビングへの道も自然と開けていきます。

6. まとめ

モディファイド・フロッグキックは、ただの“移動手段”ではありません。

・ 環境を守る手段であり
・ バディとの信頼を築く手段であり
・ より高度なダイビングへの入口でもあります

水中での一挙手一投足が美しく、意味あるものになるよう、今日からやさしいキックの第一歩を踏み出してみませんか?

確認チェック

1問だけ、理解を確認してみましょう。

Q. モディファイド・フロッグキックの最大のメリットはどれ?

A. 推進力が高くて早く泳げる
B. 泥を巻き上げにくく、狭所でも使いやすい
C. 足全体を大きく使って強く蹴る

正解:B