(2025.6.20)
エアシェアで大切なこと ― 本当に命を預かれるダイバーになるために
火事が起きたら、まず消火器を手に取り、火に向かって噴射します。
しかし、本当に大事なのは「その後」です。煙の流れを見て、避難経路を確保し、誰がどこにいるかを冷静に把握する。
エアシェアも、それと同じです。
水中での真の緊急事態、それは「エア切れ」です。
あなたはバディのエア切れに冷静に対応し、水面まで安全に導く準備ができていますか?
大切なのは迅速さと、安心感。
そのためには事前のトレーニングと準備が不可欠です。
使えるスキルにする
・エア切れを「頭で理解する」だけでなく、水中で反復練習して自動化する
・緊急時をリアルにイメージして、冷静に行動できる力を養う
・仲間と命を守り合うという意識を持ち、ダイビングを一歩アップデートする
エアシェアの基本手順
1. レシピエントが「エア切れ」のサインを出す
2. ドナーがオルタネイトをすぐにレシピエントに渡す
3. 残圧・バルブの開放を確認し、精神的な安定を促す
4. 浮上ルートを共有する(垂直か、水平方向か)
5. 浮上または移動を開始する
この流れがスムーズにできるよう、繰り返し練習しましょう。
迅速さと冷静さのバランス
レシピエントはパニック寸前の状態です。
だからこそ、ドナーは「素早く、かつ慎重に」接近する必要があります。
距離を詰めすぎれば、レギュレーターごと引っ張られてしまうこともあります。
その後、落ち着いて残圧や浮上ルートの確認を行い、レシピエントの気持ちを落ち着けましょう。
“急ぐべきところ”と“冷静に進めるべきところ”の見極めが重要です。
細部への気配りが命を守る
例えば――
・ドナーがレギュレーターのネックを握ったまま渡すと、角度が悪くうまく咥えられない
・不用意なパージでエアを噴射させてしまうリスクも
▶︎ 解決策:
・ドナーは渡す前に手をネックからホースへスライド
・レシピエントはネック部分を握って受け取る
これだけで、事故の芽を1つ摘むことができます。
また、これらを自然にできるようになるには反復練習(Sドリル)が鍵です。
バックアップと独立性 ― サイドマウントの視点から
オルタネイトを咥えたまま浮上や移動するのは、正直に言ってストレスがあります。
その点、サイドマウントならシリンダーごと渡すという選択肢があります。
・相手に呼吸源をそのまま手渡しできる
・自分はバックアップで冷静に対応できる
・独立した2系統のレギュレーターは、故障時の安全にも強い
相手にも自分にも、余裕と安心感を生むスタイルです。
まとめ:10秒で命をつなげるか?
スポーツダイビングの現場では、「OW講習で一度やったきり」という方が多いのではないでしょうか?
でも、それでは足りません。
・オルタネイトは今、すぐに渡せる状態か?
・ホースは絡んでいないか?
・潜る前、潜った直後に確認しているか?
この「10秒の準備」が、いざという時に命を守る鍵になります。
テクニカルであるか否かに関係なく、すべてのダイバーにとってのマナーです。
最後に
1回10秒の習慣が、あなたの信頼性を高め、チーム全体の安全を向上させます。
ぜひ今日から、仲間と一緒に確認してみてください。
“緊急時に信頼されるダイバー”――それは、今の自分の選択でつくることができます。